中医学を学びつつ臨床の現場を見たいと言う私の野望を叶えるため、中国有数の名門校である「上海中医薬大学」へ1週間の短期留学に行ってまいりました。
一人海外旅行(研修)が初めてかつ、中国語理解度10%以下の状況で一体どの様な研修になったのでしょうか?
今回は上海2日目。
午前中は、上海中医薬大学内にある博物館見学、午後は中医学概論(講義)を学びます。
前回の記事はこちら↓
開会式、他のメンバーと合流
いよいよ今日から上海中医薬大学での授業(病院実習)が始まります。
授業は8時半~16時半までで、フルタイムでございます。(金曜土曜の午後はフリータイム。)
今回参加するグループは全部で3つです。
・中医学耳つぼペア(女性2人組。超お世話になりました。私にとって女神です。)
・解剖メインの柔道整復師が中心となったグループ(男女混合で約10人です。)
・薬膳グループ(全員女性で18人です。途中参加でほぼ別行動です。)
私は個人参加なので、どのグループにも属しておりませんが、ほぼ全ての授業に参加する運びとなります。また、開会式直後に発覚するのですが、それぞれ目的が異なるため大半が別行動となり、滞在日数も違います。
開講式の様子。
中心にいらっしゃる方が、今回の担当教授である鉏桂祥先生。
その奥に座るグレーのジャケットが私。
医学歴史博物館
開会式での顔合わせを終え、上海中医薬大学校内にある「医学歴史博物館」を見学します。
この施設は2004年に新しく作られたもので、中国で唯一の中医学を専門とした博物館です。14000点の展示物は、それぞれ中医文化・鍼灸推拿・養生康復・中薬方剤・中薬標本に分かれていて、さらに上海中医薬大学の歴史についても知ることができるようになっています。
鍼灸師であれば誰でも知っている重要アイテムの数々や、貴重な生薬標本が展示されているので、大変有意義な時間を過ごすことが出来ました。残念ながら展示物には日本語の解説文がないのですが、通訳の顔先生が丁寧に解説してくれたので不満点は一切ありませんでした。
なお、博物館にはお土産コーナーがあったのですが、惜しくも月曜日は休館日なので購入することが出来ませんでした。(後日、上海中医薬大学ロゴが入ったテディー・ベア、トートバッグを購入。)
上海市の今年の「十大科学普及プロジェクト」の一つである上海中医薬博物館が12月18日にOPENした。今年の一連の博物館プロジェクトの中で最も大きな規模のものになる。場所は上海の浦東新区の張江ハイテクパークに位置する上海中医薬大学のキャンパス内で、円筒形の建物が象徴的。 建築面積は6413平米で、館内には新石器時代からの中医学に関係する資料が14000点あり、そのうち700点が展示されている。そのほかに中医学の貴重な文献なども展示されている。また中薬関係では3000あまりの生薬・中成薬が展示される。珍しいものも少なくなく、例えば長沙の馬王堆漢墓から出土した桂皮・辛荑・茅香のほか、泉州湾の宋代の沈没船から発見された木香・沈香、宋代の民間の医師たちの間で使われた八掛串鈴、清代乾隆皇帝が編纂に関わった『医宗金鑑』の鍼灸銅人などは、中国国内でも貴重な展示品だ。 博物館の中は医学史博物館・中薬標本館・大学史館の3つのブースに分かれている。この博物館は年間300日見学が可能で、年間のべ15万人の見学者を見込んでいる。
出典:東洋学術出版社
人体解剖標本室
博物館での見学を終え、次は「人体解剖標本室」の見学です。
この施設の優れている点は、殆どの展示物が樹脂ではなく「本物」という点です。樹脂の模型では分からない細部まで観察することが出来ます。2005年頃に流行った「人体の不思議展」の規模を小さくした感じでしょうか? また、通常の人体標本であれば筋肉や神経の名前が記されているのですが、ここではその他に、経絡や経穴(ツボ)の位置が記されている点が、如何にも中医学と言う感じがします。翌日に本当の解剖実習を行うので、人体についての詳細はその時に記事にします。
学食でランチ!
お待ちかねのブレイクタイムでございます!
大人数のグループは何やら別フロアでVIP的で美味しいものを頂いている様なのですが、私のような庶民は学生と一緒にお食事でございます。(これがまた良い。 😛 )
上海中医薬大学の学食は種類が多くて目移りしてしまうのですが、ここで先日記事にした問題が発生してしまいます。小さく書かれたメニューが頭上に表示されているだけで、弱視の私では文字が解読出来ないのです。しかも、食べ物の写真がないので何が何だかサッパリ分かりません。 😕
ここで先程ご紹介した、Fさん、Oさんの「耳つぼペア」にご協力頂くことになります。特に、Oさんは中国語が堪能なので心強く、今回の中国短期留学では無くてはならない存在となります。(残念ながら私より早く帰国してしまいますが。)
さて、私が注文したのは「牛肉面」という中国ではポピュラーなラーメンでございます。全く辛くはなく、パクチーのアクセントが効いていて、とても美味しゅうございました。
フォントがやたらと小さい学食のメニュー。
マックのように、手元の「見やすいメニュー」が欲しいとつくづく思いました。
Oさんのお蔭でありつけた牛肉面。
本格的な手打ち麺で、卵のトッピング付きです。
お金が足りなくなったので、ATMを求めて路面電車を利用して駅まで出かけました。
これ以降、地下鉄と路面電車を多用することになります。最終的には中国人に道を聞かれるレベルまで成長してしまいました。 😆
中医学概論(講義)
学食での楽しいランチタイムを終え、次は座学の時間でございます。
今回学習するのは、鍼灸マッサージ師が学校で習う「東洋医学概論」ではなく、「中医学概論」なので微妙な違いがあります。受講者は午後から参加した薬膳グループと私で、中医学的な臓腑、舌診、生薬について詳しく学びました。解剖学同様、アカデミックな授業は10数年ぶりで、昔習った内容を殆ど忘れていました。特に臓腑の肝や舌診については日本と多少違う部分もあり、「復習+再発見」の連続で良い刺激となりました。生薬の解説も漢方薬屋を営んでいる私にとって、貴重な情報となりました。
担当講師の鉏桂祥先生は我々の業界では有名人で、日本の鍼灸マッサージ師の養成学校である「東京医療専門学校(呉竹学園)」で不定期に指導を行っています。また、教鞭をとるだけではなく、上海中医薬大学附属病院の曙光病院で働く現役の医師なので、臨床で使える生きた知識を惜しみなく伝授して頂けます。一体いつ休んでいるのか、そのバイタリティーに脱帽です。
中医学を学習するのであれば、この書籍がおすすめです。筆者は有名な兵頭先生です。
2日目を振り返って
今日はアカデミックな内容が多く、丁度よい復習となりました。普段の私は、YNSA(山元式新頭鍼療法)の様な、どちらかと言うと近代的な治療法を主としているので、東洋医学の学術的な部分については失念している箇所が多く、改めてその重要性に気がつくことが出来た1日でもありました。
それにしても6月の上海は暑いです。気温は30度超えで、恐らく湿度も日本より高いのではないでしょうか? 滞在期間中雨が降ったのは初日だけで、それ以降は全て蒸し暑い夏日となりました。ジャケットを脱ぎ捨て、大好きなアロハシャツと短パンが大活躍する事となります。
晩御飯は「紅焼肉定食」です。
ご飯が軽く2杯分あり、食べきれませんでした。
次回は上海3日目。
上海中医薬大学附属病院での病院実習と人体解剖実習でございます。